Guri@VOICEROIDブログ

日常やゲーム、ボイロ等ををゆるく書き綴るブログです。

【VOICEROID小説】聖なる夜の贈り物

 

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仕事終わりの深夜

 

毎年この時期は忙しい

営業の仕事はもちろんのこと

 

寿司屋の手伝いもたんまりだ

 

あかりも夜遅くまで働いている

それでも俺が家に帰る時には

 

風呂も飯も出来ている

本当に器量の良い娘だ

 

 

 

今年も

 

例年と変わらないクリスマスだ

 

 


今年のクリスマスも時間ギリギリだな


お店が繁盛する時期ですから


そうなんだがな

 

店は夜の10時まで開いている

客がいなくなった時間に掃除やその日の

売り上げを計算したりする

 

その為、普通は家に戻るのは

日付を跨ぐことが多い

 

特別な事がある時は

計算などは後回しにすれば

日付を跨ぐことなく家に戻ることが出来る

 

 

でも誕生日にゆっくりできたので


必要以上に望みはしませんよ

 

相も変わらず謙虚な奴だ

物欲がないお陰で上手くいっているところがあるが

 


…お前はもっと望んでもいいと思うがな


望み過ぎると


ろくな事になりませんので…

 

 

ふっと哀愁ある表情になる

 

俺もあかりも望み過ぎたからこそ

別次元のあかりに迷惑をかけることになった

 

そういう事なのだろうか?

 

…確かにそうかもしれないが

あかりが欲を出したのはあの一件だけだ

 

それ際も自分の戒めにしているのだろう

 

…ちげぇねぇな


はい、クリスマスケーキです

 

テーブルに置かれた小さめのホールケーキ

二人分にはちょっと多めだが

甘いものが好きなあかりが平らげてくれるだろう

 

基本の生クリームにイチゴ

真ん中にはメリークリスマスと書かれた

チョコ板が乗っている

 

周りには店でみたサンタの砂糖菓子が乗っている

 

デコレーションにはカラフルなチョコが散りばめられている

確か、カラフルスプレーだったか?

 

 

ちゃっかり手作りか


お前は本当に準備が良いな

 

マスターと食べたかったので

 

恥ずかしそうに顔を赤らめるあかり

 

答えにはなっていないのだが

きっと俺の事を想って作ってくれたのだろう

 

言葉に偽りはなく

俺の為だけに作ってくれた事実が只々嬉しい

 

・・・・・

 

・・・・・

 

暫く、自然と見つめ合う

 

少しばかり微笑みながら見つめ合うこと数十秒

あかりにはもっと長く感じただろう

 

顔は真っ赤になっているが

視線を外すことはしなかった

 

 

食うか

 

そ、そうですね!

 

あかりが耐えきれそうになかったので

ケーキを食べる様に促す

 

まだまだ経験が足りねぇな

 

フェード


ふぅ…食った食った


日付変わる前にケーキたぁ太っちまうぜ

 

質素ながらもクリスマス仕様の料理にケーキ

血糖値がドバドバってなぁ

 


日頃営業で歩き回っているのですから

これくらいで太ったりはしませんよ


だといいがな


そうですよ

 

 

いつもと変わらず他愛もない会話

 

もう間もなく日付が変わる

このまま風呂に入ってベッドで眠り

また同じ朝を迎える


・・・・・


マスター?

 

黙ってカーテンが閉じられた窓を

じっと見つめ始めた俺に疑問をもったのか

 

どうしたのだろうと、あかりが声をかけてきた

 

雪は…まだ降ってんのかねぇ?


…今は止んでますね

 

今年は雪は降れど積もってはいない

それは帰る道の中で分かっていた

 

 

ちょっと散歩でもしないか?


え?

 

お前とクリスマスに歩くなんてこと
したことなかったと思ってな


マスター…

 

もちろんそんなことが理由ではない

まだ大切な用事があるからだ

 

今まであまり意識したことなかった所為で

少し不自然な誘いにはなったが

 

それでも大切な事なのだ

 


嫌なら無理強いはしねぇよ

 

嫌ならここで済ませればいいことだ

できれば外でと思ってしまうのは

俺の我儘だろう

 

・・・なかなかどうして

俺もロマンチストになっちまったな


そんなことありません
準備して来ますね!


おう、暖かくし来いよ

 

ぱたぱたと自室に戻り

支度しにいったあかり

 

断られるなどある訳ないのだが

分かっていても、こういった気遣いは重要だろう

 

あいつも疲れてるだろうからな

 

さて、皿を片づけたら

俺も準備しに行くさね


フェード

 

外は雪は降っておらず

さっきまで雲がかかっていた月が顔を出していた


うわぁ…寒いですね…


足元気を付けろよ

積もってはないが滑るかもしれねぇ

 

例え雪が積もってなくても凍結の危険がある

外に連れ出した上に転んで怪我でもさせたら大事だ


マスター
手を…繋ぎませんか?


…そうだな

転倒予防にはなるな

 

俺の心配を察したのか

手を繋ぐことを提案してきたあかり

 

恥ずかしいのか、顔は真っ赤だ

 


…えへへ

 

手袋をした手でキュッと手を握る

布越しの筈なのに、あかりの温もりがあるかのように暖かい

 

気付かないだけで、俺も顔が赤い様だ

 

悪かったな

 

急にどうしたんですか?

 

今までずっと忙しくて
お前を放置してた
寂しい思いさせてんじゃねぇかって

 

これは以前の事件だけでなく

これは店を出すと決めた時からずっと思ってた事だ

 

毎日毎日出店の為に走り回って

家にあかりを一人で置いている事が大半だった

 

今の様に、クリスマスだの誕生日だのと

ゆっくり過ごした事はない

 

挙句の果てには失踪して

大事にすると決めた家族を放置していたのだ

 

・・・・・
確かに、寂しかったです


だよな、すまん

 

当たり前の返答だ

 

あかりのマスターになると提案したのは俺だ

家に招いて、家族だと言ったのは俺だ

 

しかし、あかりは言葉を続けた

 


ですがマスターが


ずっと夢の為に頑張る姿を見るのが


とても好きでした

 

紆余曲折はありましたが


素敵な出会いに恵まれて


マスターの夢は叶いました


だから、寂しくても


それ以上の幸せがあったので


マスターが謝ることはありません

 

実にあかりらしい言葉だった

他人を気遣い、柔らかい優しい言葉

 

それに…

マスターの夢は

私の夢でもあるのです

 

私達の夢が叶って

本当に良かったです!

 

心の荷が降りるのを感じる

ここ数年間ずっと感じてた罪悪感

 

それでも夢の為に止まれなかった


あかり


はい?

 

そんな愚かな俺に愛想もつかずにいてくれた

大切な人に贈れる言葉は

 

ありがとう

 

これだけだ

真っ直ぐに、目を見て…


・・・・・
はい

私も、ありがとうございます!

 

月夜に照らされた笑顔

美しく映るその笑顔は

 

きっとどんな人間の心も溶かすだろう

 


それと…ほら


これは…クリスマスプレゼント?


メリークリスマスって奴だ

 

これが一番大切な用事

誕生日のプレゼントを渡した事はあったが

 

クリスマスはいつも適当な物で済ませていた

 

だが今回は、いつもとは違う

大切な人の贈る

 

大事にして欲しいもの


…指輪


これからもずっと
よろしくってヤツだ

 

別にプロポーズって訳ではない

それをするならもっといい物を一緒に買う

 

これは…言うなれば親愛の指輪

 

大切な家族に贈る親愛の指輪だ

 

マスター…
大事に、しますね!


おう

 

満面の笑みに少し涙を浮かべて喜ぶあかり

 

少しだけ緊張したが

その笑顔を見て安堵する

 

そして、もう一つ…


それと…

 

 

繋いでいた手を放し

腰に手を回し抱き寄せる

 

唇と唇を軽く触れ合わせ

また元の様に手を繋ぎ直す


…用は済んだ、帰るぞ


…はい!

 

帰り着いた時には日付は変わっているだろう

 

またいつもの日常が戻ってくる

 

しかしそれはいつも通りであれど

確かな絆が結ばれた日常となる

 

 

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